不動産仲介料は主にこの2つの要因により決まってきます。

①仲介会社数による決まり方
②価格調整のための緩衝材の役割

M&A仲介の場合と大きく異なる点になりますが、
不動産仲介は宅建業法により
最大の報酬額が法定で決まっています。

もちろんどんなときでもその最大額を狙いにいくのですが、
減らす方向には制限がありません。

①仲介会社数による決まり方

まず仲介者の数による決まり方ですが、
自社が1社単独で、
売主と買主に売買契約締結をして頂けるとすると
両方からそれぞれ最大で
取引金額の3%+6万円を得られます(税別)。

つまり全体では
取引金額の6%+12万円となります。

(「プラス6万円」というのは、
取引額が400万円未満であるときに
最大料率が3%ではなく
4%だったり5%だったりするので、
その場合と比較したときの調整額になっているのですが、
詳細は割愛します。)

これを俗に「両手」といいますが、
なかなか両手が決まることはなく、
仲介会社が2社関与して
売主側と買主側でそれぞれが
3%+6万円を受け取ることが大変多いです。

これを「分かれ」と呼んでいます。
売主側仲介と買主側仲介は
それぞれの主張を戦わせつつも
成約しなければ共倒れになることから
瞬間的には呉越同舟というか
一蓮托生の関係になります。

また、この時は仲介会社間では
契約関係は発生しません。
それぞれの会社が単に
売主または買主との間で
媒介契約を締結しているだけになります。

また、仲介会社が3社になることもあります。
M&Aではとても嫌がられますが、
不動産業界ではまかり通っています。

仲介料の分け方はさまざまです。

売主買主の両方あわせた分母である「6%分」を
3社で均等にわけることもあれば、

売主と直接接点のある仲介は
売主側仲介料を独占し、
残りの2社は買主側仲介料を折半する
(「買い分かれ」)こともよくあります。

なお、どの場合にもいえますが、
売り物件が大変希少で価値があり、
売主がそれを理解しているときには
強気の態度となり、

「売主側からは仲介料を払わない」

と言われることがあり、
この場合、全ての仲介会社は
買主側から受け取るしかないということもあります。

②価格調整のための緩衝材の役割

次に売主による売却希望額と
買主による購入希望額に
差がある場合のお話です。

売主がもうこれ以上価格を下げられず、
買主がもうこれ以上買いあがれない場合、
案件としては成約しなくなるのが通常ですが、
何とか決めたいときに
仲介会社が自分たちの報酬を削ることを考えたりします。

たとえば、上記の「分かれ」の場合に、
売却希望額が1億円、
買主の購入希望額が9800万円である場合、
もうあと一息なのですが、
成約にならない場合があります。

ですが、売主・買主とも
それぞれが仲介料を3%見込んでいますので、
一旦それを無視すれば
売主はあと300万円下げることができますし、
買主もあと300万円買い上がれることができます。

必要なのはあと200万円ですので、
売主側仲介が100万円の報酬の返上を提案し
買主側仲介も100万円の報酬の返上を提案すれば
理屈上は成約することができます。

宅建業法上も減額することは問題がありませんし、
成約しなければ
300万円も200万円も売り上げが発生しませんので
仲介会社としてはやむなく
これを提案する意味があるということになります。

本音ではもちろんやりたい提案ではありませんが。

さて、当社は賃貸経営や土地活用の建築コンサルティングなども
行うのですが、
その分野ではフィーの相場観はなく、
「建築費の3%ください」と提案をしても
「それは誰が決めたのか?」と
疑問を唱えられることがあります。

それと比較すると、
宅建業法および宅建業界が
広くあまねくこの
「(取引金額の)3%」を
周知してきてくれているおかげで、
仲介業務を行う際に
3%そのものを否定されることは少ないです。

しかしながら、最近は
ネット系とか定額系などの仲介会社も出てきており、
これまでの業界のルールを
覆そうという動きがあるのも確かです。

どんな場合も
精一杯のネットワークと交渉力とノウハウを提供し
顧客にご満足いただいたうえで、
「3%」を受け取っていきたいものです。