M&Aの取引として成立せず不動産の売買になった時の例です。
法人間での不動産の売却でありながら、
売主側の廃業に伴い、従業員も不動産の買主側引き取るというケースがあります。
このようなときに不動産取引上、気をつけるべきことが2つあります。
①建物の管理責任
不動産の所有権が動くと、
自社利用である場合は管理責任も新しい所有者に移ることがほとんどです。
賃貸中の不動産であれば所有者が変わっても借りているテナントが管理をし続けることがほとんどですが、
自社利用の場合、買主側が管理をしないといけません。
さて、そもそも、管理とは何でしょうか。
例えばエレベーターがあればメンテナンス契約を引き継いだり、
電気設備などの維持保全の契約などがあります。
もっと簡単なところで、
各種ライフラインの名義を変えたり管球の交換をするなども管理に含まれます。
火災報知器や誘導灯、非常照明など、消防設備のメンテナンスも含まれます。
不動産の移転と共に従業員の転籍が絡む場合、
従業員が同じ場所で働きながら勤務先が変わることがありえます。
雇用を引き継ぐ約束に伴い、
従業員は売主の会社からは退職し買主の会社に就職するケースですね。
そんなとき、
万が一従業員が火事を起こしたり設備を故障させてしまったときに、
管理責任を明確にしておかないとトラブルのもとになります。
つまり、たとえば
・不動産の売買が完了し所有権は買主に移転しているのに従業員がまだ元の勤務先に在籍する場合
・不動産の売買が未了なのに従業員の転籍が先に完了した場合
などにおいて、失火や損失を起こしてしまうとどちらの責任か不明瞭になります。
対策としては、
・不動産の所有権移転と従業員の転籍を同時に行う
・不動産売買契約のなかで管理責任を明確化しておく
などの必要がありますね。
②建物の火災保険
建物には火災保険や施設賠償責任保険などの保険が付保されていることがほとんどです。
最近は火災保険の特約として地震保険も追加されることが多くなりました。
所有権の移転に伴い、火災保険を負担するのも売主から買主に移転します。
そこで①の管理責任ががどちらにあるかが大切になります。
とりあえず売主か買主が火災保険を設定しておけば大損害は免れる可能性が高いですが、
管理責任の所在と保険契約者が異なる場合は、
後日保険会社から過失責任を問われることがあります。
よって、やはり管理責任の所在と保険契約者は一致させておくことが望ましいです。
このような場合ですが、
ざっくり言ってしまえば、当面のやり取りが落ち着くまでは、
どちらも火災保険を設定しておくことが多いです。
慎重な対応を期したいものですね。