セル&リースバックとは、不動産を利用して、会計・財務面にて取りうる
前向きな経営戦略(オフバランス)の1つです。
所有している不動産を売却すると同時に買主からその建物を賃借する契約(賃貸借契約)をスタートさせ、
会社資産から不動産を切り離しつつ事業や利用状態を継続させるというものです。

P/L面では、所有していることに伴う固定資産税や火災保険の支払いがなくなりますが、
代わりに家賃を支払っていくことになります。

経営・財務面では、所有不動産を外部に売却して現金を得られることのほかに
下記のようなメリットがあります。

・得た現金を銀行に返済することで債務を削減する
・B/Sの資産と負債を縮小させることでROEを拡大させる
・直接調達・間接調達の手段を利用することなく事業資金、
 採用費用、IT投資資金を工面できる
・含み損益を顕在化させ、節税を実現したり利益を拡大させる

所有権に基づく利用権限から賃借権に基づく利用権限に置き換わりますが
物理的には何も変化なく利用が継続できます。
(所有権がなくなりますので金融機関からみたときの担保価値はその分だけ減少します)

注意点もあります。
この取り組みは金融機関からの提案により
資金調達+損益の顕在化として利用されていました。
つまり、資金調達としては所有不動産を担保にお金を借りればよいだけですが、
決算対策として利益または損失を計上したいニーズもあることから、
いったん会社から資産を切り離して損益を顕在化しつつ
本当は売り切るつもりはないという場合です。

この際、売買契約書のなかに買戻し特約や買戻しの優先権を記載することで
売主が買い戻すことの予約をするテクニックが用いられました。
ですが、買戻しの金額を決めてしまうと、
実質的には買主には不動産資産を所有することによるリスクがないと考えられることから、
税務上売買が否認されるリスクが生じることとなったため、
現在はあまり用いられていません。

また、売主が買主のためにテナントとして支払う家賃を保証することなども
リスクが移転しないことから売買が否認されることがありました。

リスクが売主から買主にしっかりと移転する売買には
「真正売買性」「真正売買の真実性」が求められます。
取引においてはこれらの点を押さえることも重要となります。