店舗の原状回復はトラブルになりやすい。店舗の「原状」はオーナーが提供する資産によって変化する。原状を「スケルトン状態(設備や内装がほぼ何もない状態)」にしてテナント募集すると、テナントは資産を持ち込まなければいけない設備や内装などの負担が大きくなる。一方、空調設備など汎用性のある設備や内装をオーナー側で作りこむとテナントは負担が楽になり出店しやすくなる。多くの資産をテナントに持ち込まれるとテナントは退去時に解体費用が嵩むことになり、オーナーは事務所・住居の場合に比べて、解体されないまま廃業されるという「解体未完了リスク」を負っている。したがって、その解体費用を保証金で担保していると考えることが多い。なお、テナント募集時に、競合が設定する資産区分に対抗するため、自分の募集物件についても提供する資産が影響を受ける場合がある。その結果「原状」についても変化することになる。世間的にはいろんな資産区分で募集するオーナーがいるが、あまり多くを提供したくないのが一般的である。一方、大手テナントチェーンは資産区分の「標準系」を自社で決めていることがある。そのため、テナントの出店意向がはっきりしていても資産区分の負担につき両者で折り合いがつかず賃貸借契約に至らない場合もある。「原状」は図面・表などで作成して賃貸借契約書に添付しておくことが望ましく、退去時の原状回復工事を決める際に必ず役に立つ。