店舗やホテル、介護施設などの賃貸借において、営業ができている状態であれば、
それにいたるまでにオーナーが設置して保有している資産とテナントが設置して保有しているものが異なっています。
その区分を明確にしたものを「資産区分」といいます。
資産区分表の例
最近はこの区分表を明確にしたものを賃貸借契約書の締結と同時に作成して
綴じておくことが増えてきました。
ですが古い建物や古い契約ではまだまだこの区分表をお目にかかることはなく
退去時において「原状回復」をする際にトラブルになることが散見されます。
一般に、オーナーが保有する資産をA工事(A区分)、
テナントが仕様を決めて費用を負担しオーナーが保有するというのがB工事(B区分)、
テナントが購入して設置・保有するのがC工事(C区分)といいます。
これらを定めることにより原状回復工事における「原状」の定義が定まります。
つまりA工事はテナントの退去にかかわらずオーナーの持ち物なので全く影響はないですが、
B工事はテナントが金銭的に負担したもののオーナーが(A工事部分と一緒に)保有しているため
テナント退去時に取り出すことができません。
テナントは捨てて退去するということになります。
C工事部分はテナントが撤去して退出時に出ていくことがほとんどです。
まれに次のテナントが使えそうな設備であれば(エアコンなどが多いですが)
オーナーが〇〇の設備は置いていってもいいよ、と言うこともあります。
その時に限りテナントは撤去工事を免れることになります。
オーナーと交渉する余地はあるかもしれません。
オーナー側は上記の通り、工事区分表を作成して備えておくことこそ
テナント退去時の「原状回復」のトラブルを未然に防ぐ知恵となります。
その他、営業期間中(賃貸期間中)の修繕範囲を決める「修繕区分」、
部品や一部設備を入れ替える範囲を定める「更新区分」、
そもそもどちらが契約部分を管理をするかを決める「管理区分」などもあります。